真面目な鳩井の、キスが甘い。
 妹ちゃんだけじゃなく、お母さんまでこんなに私を応援してくれてたなんて。

 鳩井、なんで言ってくれなかったんだろう?
 

「それにしても……」


 敦子さんと音色ちゃんが顔色を変えて、私の隣に目くばせした。


「「これのどこがよかったんですか?」」


 鳩井を指さして見事にハモる母娘。


「えっ」


 鳩井は静かにお茶を飲む。


「いや、嬉しいのよ?ヒナちゃんが彼女だなんて、今後一生鳩井家で語り継ぎたいぐらい嬉しい大事件なのよ?でもヒナちゃんぐらい可愛かったら、いくらでもほら、ねぇ……?」

「こう言っちゃなんですけど、この人あんまり喋んないし一緒にいてもつまんなくないですか?」

「そうそう!それにお兄ちゃんって優しいけど、ひょろっとしててちょっともやしっぽいじゃない?ヒナちゃんと言えばこうエネルギッシュなイメージだし、体育会系な子が合いそうだなぁと思ってたのよぉ」

「あと、地味!」

「そうなのよ!地味なのよ!どこに行っても平均値なのよ!」


 言いたい放題な母娘に鳩井は、無表情でグラスの汗を眺めている。

 私は「そんなことないです!!」と立ち上がった。
 

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