小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「空気感・・?」

「西島先生の周りって、いい意味で緊張感がなくてホッとします」

「それって・・褒めてる? 何となく反対の意味で、穏やかすぎてつまんないって言われたことはあるけど」

「えっ? それはひどい。私は褒めてます。
片頭痛って、緊張感も原因だと思ってるんですよね。話を聞き間違えないように・・とか、翻訳を間違えないように・・って、いつも張りつめてるから。
でも先生といると、なんだか緩む気がして」

捉え方って人それぞれなんだな・・と思った。

『ドキドキさせる危うさみたいなものもないし、つまらない』
過去に、そんなふうに言った女性もいた。

「うわぁ、美味しそう!」

セイロの蓋を開け、湯気の向こうでニコニコと喜ぶ彼女を見て、俺まで嬉しくなる。

「熱いうちに食べよう」

ふたりともアルコールは飲んでいないのに、彼女の言う『空気感』が後押ししたのか、食事をしながら少しずつお互いのことを話していった。

「西島先生は、どうして小児科を選択されたんですか? なんとなく珍しい気がして」

「そうですよね。特に開業医だと、小児科専門の男性医師はほとんど見かけないかもしれない。
僕が小児科に決めたのは、研修医の時に、初めて天国に見送った患者さんが子どもだったから・・かな。
あの頃はまだ何もできなくて、話し相手になったり、辛いときに手を握ったり身体をさすったりするくらいだったのに、それでも僕を頼りにしてくれて。彼が旅立った時に決めたんです。ひとりでも多くの子どもを助けたい・・って」



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