マッド★ハウス
最後の地権者/その2
アキラ



ようやく二人の説教が終わると、一気に場が賑やかになった

しばらくすると、なぜだかオレの名前が盛んに挙がってる

どうやら、マッドハウスの業績好調が話題になってるみたいだ

で、それはオレの貢献度が高い、という話に至ったようで…

たしかにオレは、ローラーズの補充メンバーって立場ででステージに立つようになった

はっきり言って”ど素人”同然だが、なぜだか客席は沸く

それで今年半ばから、ギグ数を大幅増でもいつもソールドアウトが続いていた

バンドブームの流れで、雑誌の口コミが火種だったのかなとも思う

とにかく、ココは過去最高の収益を上げた

そもそも、ココはバンドの大音響で近隣立退を目的にしてたんだ

いわば、地上げ事業の設備投資にあたるんだろう

で…、K地区最後の地権者が膠着状態となってた間、ココは収益を回した

その功労者がオレということで、話は盛り上がってるようだった


...



そのうち、納会は無礼講に近い雰囲気となった

あるタイミングで、間宮さんが発言した

「今年のアキラの勢いなら、行かず後家、落とすんじゃないですか?」

間宮さんのこの声は、会議室全体に響き渡った

当然、オレの耳にもしっかりと届いた

すると…

「間宮、出し切れないてめえのクソ、堅気に引っこ抜かせるってか?おー!」

北原さんのドスの利いた大声で、一瞬シーンとなった

すかさず、相和会のカリスマ、相馬豹一会長、唯一の舎弟という明石田さんが発言した

「ははは、北原よ、まあ、そう気張らんでもいいだろ。要は膠着状態を脱するということだ、大事なのは。今日は大みそかだし、かたくなな相手にも緩みは期待できる。猫だましもバカにできんぞ、なあ建田…」

明石田さんの一言で、北原さんは急にシュンとなり、黙りこくった

その間、建田さんはオレのこと、ジーッと見てる

そこへ、間宮さんがまた起立して大きな声で、建田さんに向かって訴えた

「ここはアキラですよ!なにしろ今年の絶好調男ですから。ダメもとでも…。きっかけだけでもきたら俺、死ぬ気でやりますから…」

建田さんはしばらくして、大声で笑ってからオレに向かってこう言った

「よし、アキラ行ってこいや。そこの大皿、持ってけ。やってみろ、間宮のできなかったことをな。無理ならそれでいいから。ははは…、結構いいケツしてるぞ、あの行かず後家…」

わー、参った…

寿司、もっと食っときゃよかった…





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