中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 その瞬間の、レナルド様の顔を、たぶん私は、一生忘れることができない。
 なぜか、とても嬉しそうに微笑んだから。

「……聖女様のお側に、いさせて下さい。ずっと」
「え? ずっとですか?」

 侯爵家のこと、騎士としての誇り、そして結婚。
 レナルド様には、これからたくさんの幸せが待っている。だから、ダメだと伝えないといけないのに。

『難しく考えなくて、良いと思うな。僕は』

 相変わらず、私の左肩の上で、グルグル回っている、シストが私の耳元に囁く。

「そうです。ずっと……。聖女様が許してくださる限り」

 私としては、大歓迎なのだけれど。
 でも、やっぱり、色々考えてしまうのは、どうしようもなくて、複雑な顔になってしまう。

「……うれしいです」
「そうですか」

 素気ない返事。でも、なぜかレナルド様は、もう一度口元を緩めて微笑む。
 その顔を見つめて、今度こそ私も微笑んだ。

 中継ぎだからこそ、忙しくても穏やかに過ごせるのだと、私はほんの少し、自分が置かれた状況に感謝した。

『今のうちに、幸せを味わって』

 シストの、本当に囁くような言葉は、高鳴る心臓に打ち消されて、私の耳には届かないのだった。
 平和を壊してしまう、足音は、すぐそこまで近づいてきていたのに。


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