中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

運命の赤いリボン


 村に入る直前、境界石の前で、「これは違う」と思った。
 流行病では、なかった。この村は全体が呪いに侵されている。
 村全体が、まるで薄緑色の光にまとわりつかれているみたいだ。

「これは……」

 騎士として、高い実力を持つレナルド様も、異変に気がついたようだ。
 無意識なのか、私をかばうように前に立つと、剣の柄に手をかけた。
 カチャリという音に、否応なしに緊張が高まっていく。

「あの、いつだったか、骸骨を操っていた死霊術師のいた場所に、似てませんか……」
「……聖女様が、そう仰るのであれば、その通りなのでしょう」

 あの薄緑色の光には、見覚えがある。
 村人たちが次々に行方不明になっているという情報を受け、現場に駆けつけた私たちは、洞窟の奥で死霊術師と対峙することになったのだった。あの時に、洞窟の中を満たしていた光にとてもよく似ている。

 本当に、あの時ばかりは、泣いて逃げ出したいと思った。
 それでも耐えられたのは、レナルド様が、出来る限り骸骨が私から見えないように、戦ってくれたからだ。私は、レナルド様の背中の後ろから、必死になって浄化魔法を唱えた。

 昔からホラーゲームは苦手なのだ。

 本当に勘弁してほしい。せめて、呪いだとわかっていれば、みんなにも一緒に来てもらったのに。
 剣聖ロイド様なら、操られた骸骨兵なんて、聖剣で簡単にやっつけてくれるのに。

 それに、呪いが原因だとすれば、そこには、必ず呪術をかけた側の存在がいる。
 病気さえ回復魔法で治癒すれば済む、流行り病とは根本的に危険度が違う。

「……一旦引き返しましょう」

 レナルド様の、大きな手が、珍しく私の手に触れて、軽く引き寄せてくる。
 それは、普段の余裕のあるレナルド様の行動とは、どこか違った。
 でも、ここまで来るのに、2日間。
 王都に引き返したら、ここにたどり着くには、最低でも往復4日間はかかってしまう。 
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