中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
 辺境の村は、とても穏やかな場所だった。
 シストが言うには、王国に複数存在する、聖地でも一番最奥の場所らしい。
 どの人も穏やかで、すぐに私は、村人たちに受け入れられた。

 でも、この状況はいったい……。

「聖女様! 実は、狩りの帰りに枝で手を傷つけてしまって」
「はい。……治りましたよ?」

「聖女様! 子どもが熱を出して」
「すぐ行きますね?」

 初級とはいっても、回復魔法はどこでも重宝される。
 簡単なケガや病気であれば、すぐに治癒することができるから、それは当然だろう。

 でも、困ったことに、村人たちは、私がいくら名前を名乗っても、なぜか理解できないようで、私のことをいつの間にか、聖女様と呼ぶようになっていた。

「あの……。理沙という名前があるのですが」
「――――? 聖女様は、聖女様でしょう? 魔女様と同じで」

 不思議そうに、村人たちが首をかしげる。
 これでは、私のほうが、おかしなことを言っているみたいだ……。
 横で聞いていた、子どもにまで「おかしな聖女様!」と無邪気に笑われる。

「ナオさん……。ナオさんは、私のことを名前で呼ぶのに、どうして皆さん私のことを聖女様なんて、呼ぶのでしょうか。……そういえば、ナオさんも、名前ではなくて、魔女様と呼ばれていますよね?」

 しかも、よりによって聖女様。
 聖女の称号を失った私への、運命の皮肉なのだろうか。
 
 残念ながら、旅人さんとか、治癒師様とか、ほかの呼び名も提案してみたのに、受け入れられなかった……。
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