中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
それから、なぜか魔女様と呼ばれるナオさん。
魔女という存在が、この世界にいるということは理解していた。
でも、魔女って一般的には、悪い存在という印象があった。本にも書いてあったし、聖女としての教育でも、魔女は駆逐すべき悪しき存在だと習った。
でも、聖女を召喚しては、中継ぎだとぞんざいに扱う国だもの、教育内容だって、歪んでいたのかもしれない。
私は、この優しい辺境の村の中で、今まで疑問を持たずにいた中継ぎ聖女という概念、そして受けてきた教育内容に疑問を持つようになっていた。
「――――私たちの名前を呼ぶことは、普通はできないの」
「え?」
親切な村人が、狩りの時に受けた傷を治してくれたお礼にと、作ってくれた猫専用の小さなベッド。
王都の職人にも、引けを取らないような美しい作品だ。
そういえば、その職人さんだけは、ナオさんのことを名前で呼ぶ。
そのベッドの中で、おなかを出して寝ているシストは、もう封印の箱だったころの面影もない。
微かにあるとすれば、緊張感のない言葉だけだ。
シルバーグレイの髪の毛に、黒に近い茶色の瞳をしたナオさんは、その言葉を紡ぐと、にこりと笑う。
「お肉を食べましょう」
「――――魔獣の肉は、ダメですよ」
レナルド様が、口に入れてくれた魔獣のお肉は、とても美味しかったけれど、聖女の力を弱めてしまうと言っていた。
聖女ではなくなったけれど、もしも回復の力まで弱ってしまったら大変だ。
「ふふ。普通のお肉だわ。変なことを心配するのね」
「……いただきます」
そのお肉も、とっても美味しかった。
焼き加減といい、かかっているほんの少し甘酸っぱいソースといい、王宮にいた時の野菜ばかりの生活とは、大違いだ。
そういえば、飽きることがないほど、レナルド様が持ってきてくれていた卵料理には、たくさんの種類があった……。
困ったことに、離れてしまったあの日から、逆に毎日レナルド様のことばかり考えてしまう。
尊敬しているし、信頼しているし、誰よりも迷惑をかけたくない。本当にいつも私のことを大事にしてくれたレナルド様。
この気持ちに、私はまだ名前を付けることができずにいた。