中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 私は、聖女としてあなたを守りたい。
 だから、聖女のままでいたい。
 そんな私の顔を見て、レナルド様は、どこか諦めたみたいに笑う。

「そんな顔させてしまうこと、許してください。 ずっと好きでした。少しでいいから、俺の我儘に付き合ってくれませんか?」
「え?」

 ずっと好きだった、という言葉。
 それは、あまりにサラリと告げられて、きちんと理解する前に通り過ぎてしまう。

 次の瞬間、体がバラバラの粒子になる転移特有の感覚、そして気が付けば私たちは、王都に戻ってきていた。
 どんな方法を使ったのだろう。二人同時に、辺境から王都に戻るなんて、消費される魔力が桁違いすぎて、想像もできない。私の知っているレナルド様には、できなかったはずだ。

『いくら、この状況で君の力が強まっているからと言って、無茶するなぁ……』

 心底呆れた様子のシストは、当たり前のように私たちについてきていたけれど。
 転移酔いのせいで、膝から崩れ落ちそうになる私を、レナルド様がそっと抱き上げる。

「……あの」
「大丈夫、リサが嫌がることなんてしません。今までみたいな距離を保つように、できる限り努力しますから。だから、そばに置いて」
「……レナルド様」

 その言葉通り、目の前で笑っているのは、いつものレナルド様だ。
 私が大好きな、レナルド様だ。
 でも、なぜか私には、それは本当のレナルド様に見えない。

 私を傷つけてしまうくらい尖って澱んだ言葉を、絞り出すように伝えてきたレナルド様の姿を、知ってしまったせいだろうか。

 まだ、気が付いたばかりの私の恋心は、急な変化についていくことができなくて。
 この時だけだったのに、レナルド様にきちんと自分の言葉を伝えることができたのは。

 遅すぎる答えに私がようやくたどり着いた時、レナルド様は一人でその場所に立っていた。
 でも、それはまだ、ほんの少し先の未来。
 さっきまでの姿が、嘘みたいに、「好きだ」と笑ったレナルド様に、抱きしめられた私は、胸が締め付けられるように苦しくて、幸せで、何も考えられなくなってしまったから。
 
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