中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

sideレナルド

 中継ぎ聖女の守護騎士。
 それは、どちらかというと、誰もが避けたい役割だ。

 騎士として生きていくのなら、聖女とともに魔獣と戦い命を散らすことを、望むものが多いだろう。
 だが、平和な時代であれば、聖女は、空っぽの偶像でしかない。

 俺も、あの瞬間まで、そう思っていた。
 むしろ、この役割を、誰かほかの貴族に押し付けようとすら考えていた。

 ――――まるで、たった一人、荒野に投げ出された幼子みたいだ。

 それが、聖女を見た時の第一印象だった。
 その姿は、どこか過去の自分と重なるような気がした。

 床に座りこみ、誰にも手を差し伸べられることもなく、不安げに瞳を揺らしている。
 聖女の名を冠するには、あまりにも頼りない普通の少女が、そこにいた。

 庇護欲というのだろうか。
 それとも、この気持ちは、すでにその時に芽生えていたのだろうか。

 それが、リサと俺の出会いだった。
 初めは、ただの同情だったのかもしれない。
 でも、リサのことが気になって仕方がない。
 出会った日から、彼女のことを考えない日などない。それは事実だった。

「レナルド・ディストリア卿。ディストリア家が、今回の担当だったな? まあ、中継ぎではあっても、聖女は聖女。不本意やもしれないが、守護騎士の役目を全うするように」

 断ろうと思っていたのに、彼女に興味を持ってしまった俺は、もう、決めていた。彼女の守護騎士になると。

「は……。陛下のお言葉の通りに」

 周囲のざわめきが、静かになっていく。
 まさか俺が、守護騎士を受け入れるとは、誰も思っていなかったらしい。
 俺自身がそうなのだから……。

 平凡な娘だ、という言葉を残して、国王陛下が退室していく。
 そこで初めて、俺は聖女に歩み寄る。
 手を差し伸べれば、しばらくの間、茫然と俺の顔を見つめた後、泣きそうな顔で少しだけ笑い、彼女は俺の手を取った。

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