この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

「……実は、実家の領内で百年ごとに行う祭事があるのだけれど……。来年がその年なの。資料が少なくて、もしかしたら中央神殿には残っているのではないかって」
「そうなのね! 残念だけど、この後、聖女としての役割があって離れなければいけないの。二時間くらいだけれど、調べられるかしら?」
「ありがとう」
「お安いご用よ。友だちでしょう?」

 なぜか急に明るい声になったローザリア様を不思議に思いつつ、図書室に案内してもらう。
 実は光魔法の力をなくす前は、私も聖女候補の一人だった。
 お父様は、「聖女になんてなる必要ない」と言っていたけれど、光魔法は希少だから、いくら貴族でも最低限神殿とは関わる必要があった。

 約一年ぶりに訪れた図書室は、以前と変わりがなかった。
 怪しまれないように祭事に関する本を数冊抜き取って、さっと中を確認する。
 百年ぶりに行われる祭事については、すでに一度図書館で調べていたから、内容は暗記できている。

「――――呪い」

 呪いについては、あまりに広範囲だから二時間で調べるのは難しいと思っていた。
 けれど、先ほどのルエダ卿の言葉、彼の言葉のなまりから言って隣国の北端だろう、彼の故郷は。

 迷わず、隣国の北端にある都市、ルーベリアで発展したという古代魔術についての本に目を通していく。
 心臓に絡みつく蔦。それがヒントだ。

「――――あった」

 心臓に絡みつく蔦。それは、魔術を無理に改変しようとして失敗したときに……。

「うん? なんだか暑い……」

 ふと、扉の向こうに目を向けると、扉についた曇りガラスが茜色に染まっていた。
 
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