この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

聖女様とお兄様


 しかし、会場に入った途端に私は一人っきりになってしまった。
 ディル様が、なぜか国王陛下に呼び出されてしまったのだ。

「……うーん。お兄様と合流しようかしら」

 遠目に人だかりが見える。
 間違いなく、あの場所にお兄様はいるに違いない。

 セイル・アインズ伯爵令息。
 私が、ひたすらディル様を追いかけている間、社交活動をきちんとこなし、王立学園をAクラス首席で卒業したできのいいお兄様。

 しかし、運命のいたずらなのか、ディル様と出会ったことで私もAクラスを学業では次席で卒業してしまった。しかも、ディル・サーベラス侯爵と結婚してしまったため、まだ婚約者のいないお兄様の周囲には、いつも黒山の人だかりが出来ている。

(昔から、ものすごく人気のある人だったけれど、想像以上だわ)

 けれど、足を一歩踏み出したとき、声が掛けられる。
 振り向いた先には、聖女ローザリア様が美しい白銀のドレスを身に纏って凜とした姿で立っていた。

「ローザリア様……」

 呆然と見つめている私の前で、急に膝をついたローザリア様。
 いったい何が起こったのかと目をパチパチとしていると、その美しい蜂蜜色の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
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