先生の隣にいたかった

〜クリスマス〜






「またね」





そう言って、先生は背を向けた。



その背中に何度声をかけようと、



泣き叫ぼうと、



先生が振り向くことはなかった。



休み時間に、そんな短い夢を見た。




「いお?次、英語」



「…ごめん…。



先行ってて」 




「…大丈夫?寝不足?」




「うん、ちょっとね」




いつも教室で英語をしている人たちも、
今日は違う教室に移動していた。







授業が始まっても、
私は、教室で一人座っていた。




なにかを考えているとかじゃなくて、




ただ、







静かな場所で一人になりたかった。






でも、一人になると、
どこからともなく溢れてくる涙。






ただの夢。





そう思っていても、
先生がいなくなることが、
こんなにも苦しくて…辛いなんて、
思っていなかった。




頭では分かっていたのに、
想像以上に怖かった。





私の前から先生がいなくなることが、






辛くて







…苦しかった。






「…いお…どうしたの?」




来るはずがないと思っていた先生が、
突然、教室に入ってきた。




私は、慌てて涙を拭った。




それでも、幾度となく溢れる涙。
もう、隠すことができなかった。




「…どうして泣いてるの?」




言えない。




先生には言えないよ。



だから、首を横に振ることしか出来なかった。




「…もうすぐ授業終わって、
みんな帰ってくるから、
落ち着くまで屋上に行っておいで。



…俺は行かないから」




先生は、
私が一人になりたいことを分かってくれた。





「…ごめんなさい」







一番そばにいて欲しい人なのに








…今だけは、







一番会いたくなかった。



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