私のお願い、届いてますか?
「鈴木さん、どうしたんですか?」

私が声をかけると、俯いたまま華奢な体をビクッとさせた鈴木さん。

「…梨々香のストーカー…鈴木さんだったんだ」

えっ…

秀人の言葉に、数秒時が止まった。

「…ど、どうして…」

心拍数が上がり、動揺する中、やっとのことで尋ねる。

鈴木さんは、しばらく沈黙した後、小さな声で、俯いたまま話し始めた。

「…羨ましかったの…」

羨ましかった…?

俯いたままの鈴木さんを見つめながら、次の言葉を待った。

「…梨々香ちゃんと出会った頃は…キラキラしてて素敵だなって…憧れだった。…でも…自分の夢に全然近づけない自分に嫌気がさしたと同時に…梨々香ちゃんに嫉妬したの…」

嫉妬…。

鈴木さんが、幾つものコンクールに応募していることを知っていた私は、望む結果にならなかった時に、励ましの言葉をかけていた。

心の底から応援していたけれど…それが鈴木さんにとっては重荷だったのかもしれない。

「…そんな時…コンビニで雑誌を並べてる時に週刊誌の記事を目にして…。気持ちがぐちゃぐちゃになって、見ている景色が全て歪んで見えて…。最低な行動をとった。…ごめんなさい…」

何度も何度も深く頭を下げる鈴木さんの姿に、犯人が鈴木さんだったという衝撃と、こんなに取り乱す姿に私の気持ちもぐちゃぐちゃになる。

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