私のお願い、届いてますか?
第11章 分岐点
「はい、ちょっと酸っぱいりんごだけど」

病室を移った秀人に、家にたまたまあったリンゴを持ってきて剥いて手渡す。

「…ありがとう」

昨日よりもすっかり顔入りの良くなった秀人は、シャリっという音を立ててかじった。

「…まだ、ニュースになってる?」

「うん。でもね、さっき有名な人が結婚したって速報が入って、今は、どのワイドショーもその話でもちきり」

「…世の中、そんなもんだよ」

正直、ほっとした。いつまでも報道されてたら、もっともっとたくさんの人に迷惑がかかるから。

「あっ、洗濯するもの持って帰るね」

あらかじめ渡しておいた洗濯用の袋に、衣服が入っているのに気がつき、声をかける。

「うん、…こんなことさせてごめん」

「えっ?大丈夫だよ」

秀人がこんなに気にしているのが返って申し訳なく思ってしまう。私は秀人のおかげで無傷でいられたのだから。

「梨々香の方はちょっとは落ち着いた?」

「うん。会社も通常業務に戻ってるみたい」

会社の前であんなことがあったから、警備は強化することになったと部長が昨日連絡をくれた。






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