私のお願い、届いてますか?
それから、俺は少しずつ恵麻と距離を取りはじめた。俺が近くにいなければ傷が癒えて、また外に出られると思ったから。

そうしているうちに、大学に行くタイミングで、さらに疎遠になり、いつしか恵麻の事を考えることは滅多になくなっていた。

まさか…こんな形で会うことになるなんて…。

もっと向き合ってあげればこんなことにならなかった。








『倫也が遠くにいっちゃったから…』

ここに来る前に、恵麻にあった時に言われた言葉が頭の中に蘇る。

『昔はすぐ隣にいたのに』

光を失った、抜け殻状態の恵麻が言葉をさらに続ける。

『だから…取り戻したかった』

表情は変わらないのに、恵麻の頰を涙が伝っていた。その姿に、俺の胸が押しつぶされそうになった。

『…恵麻、1人にさせてごめん』

それだけ伝えて、背中を向けて恵麻の元から離れてきた。正直、かける言葉が何も浮かばなかった。謝ることしかできなかった。








「…幼馴染だったんですね…」

考え込む俺に、相村さんは眼鏡をかけ直して声をかけた。

俺は小さく頷いてから、一体自分が今どんな表情をしているのか不安になった。気持ちを誤魔化すように話題を変える。

「…相村さんと河田さんは幼馴染?」

「…いえ…数年前に出会いました」

正直驚いた。だって、河田さんが沖縄にいる時に見せていた、彼氏の話をする様子があまりにも自然体だったから。

まるで昔から何でも知っているようなそんな雰囲気に包まれていた。


< 135 / 137 >

この作品をシェア

pagetop