私のお願い、届いてますか?

side 相村秀人

ガチャッ

データをもとに論文をまとめていると、研究室の扉が開き、同じ研究室の上田と高橋がビニール袋を片手に入ってきた。

「相村、どう?進んだ?」

「まあ…お前らこそ、こんな時間にどうしたんだよ。今日は休みじゃなかったのか?」

2人が取り掛かっている研究がひと段落して、確か今日は休んでいたはず。

「七夕まつりの屋台で色々買ってきたんだよ。相村1人で可哀想だから、お裾分け」

そう言って、2人は袋の中から焼きそばやたこ焼き、ベビーカステラを取り出す。

「全部粉もん…」

思わずそう口から出てしまう。

「祭りだから」

高橋が笑いながら即答する。上田は冷蔵庫から麦茶を取り出して手際よく紙コップに注いだ。

「…たこ焼き、何年も食べてないな」

爪楊枝を刺して持ち上げて呟く。

「こういう機会ないと食わないよな」

今度は焼きそばを紙皿に取り分ける上田。上田は、こういう時、率先してお世話してくれるタイプ。

「そういえば、多分、相村の彼女見かけた」

「…ああ、友達と行くって言ってた」

誘われたけど、研究が立て込んでて断ったんだよな。

そうか、2人とは梨々香といるときに会ったことがあったんだった。でも、だいぶ前の話なのに、よく覚えてるな。



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