私のお願い、届いてますか?
第5章 不穏な空気
シャワーを浴びて、ベットのある部屋に閉じこもって会社に行く準備をしながら、秀人とのやりとりを思い出す。

2日半も休みになるようにしてくれてたんだ。嬉しくて顔がにやけてしまう。

トントン

ガラッ

ノック音の後、扉が開いて秀人が顔を出す。

「俺、そろそろ研究室に行ってくる」

「えっ、あっ、もう?」

時計を見ると、まだ6時ちょっと過ぎ。でも、そっか、きのう早く帰ってきたから…。

「…簡単にだけど、トーストにベーコンと目玉焼きのせたの作っといたよ。あと…ココアも温め直したから」

「ありがとう。秀人の朝ご飯、私大好き」

そう答えると、照れ臭そうな表情を見せて、手を軽く上げ、「じゃ、行ってくる」と言い扉を閉めた秀人。

私は急いで、服を着替えて、玄関に向かった。

「…いいよ、見送り…」

「ううん。ちゃんといってらっしゃいって言いたい」

中々、朝見送る機会がないからこそ、大切にしたいと思う時間。

「いってらっしゃい」

床に置いてあるリュックを秀人に渡して伝えると、秀人は恥ずかしそうに苦笑いしながらも、軽く私の頭を撫でて、玄関を後にした。

触れたところがちょっとだけ他の部分よりも温かく感じ、私の心も温まっていった。



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