私のお願い、届いてますか?

side 朝岡倫也

河田さんのオフィスを出て、近くのカフェで次の約束までの間、時間を潰す。

次に会うのは、S社の工藤さんだったな。

詳細を確認しようと、カバンから手帳を散り出すと、手のひらサイズの紙封筒が視界に入った。

あっ…忘れてた。

こっちに来ると伝えた時に、礼人たちが、河田さんにと準備したもの。

中身は確か、沖縄ならではのデザインの名刺入れだって言ってたな。

さっき、時間をとらせてしまったから、戻ってまた呼び出すのは申し訳ない。

昼休憩に連絡して、帰りに少し時間をもらおうかな…。

ふーっと息を吐き、カバンの内ポケットにそっとしまい込んで、仕事用の手帳を開いた。








沖縄で、初めて河田さんに会った時に、まだ幼い雰囲気に戸惑った。こんな若いのに、俺の一目惚れした企画を考えたことが信じられなかった。

彼女は、とても打たれ強い。正直、俺についている2人の能力は社内でもずば抜けているから、河田さんが劣等感を抱くのは仕方のないことだった。

でも、彼女は短期間で食らいついてきて、俺の伝えた条件を全てクリアする、これ以上ない企画を練り上げていった。

周りの信頼も厚く、いつも笑顔を絶やさない彼女は魅力的な女性だと思う。

10歳近く離れているのに、こんな気持ちになった理由は、流石に自分でも気がついる。




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