私のお願い、届いてますか?
「…軽率な行動をとって…ごめんなさい」

頭を下げる梨々香に、俺の方がどう声をかけるべきなのか、悩んで言葉を慎重に選んでしてしまう。

「…下心あって、会ったわけじゃないだろ?」

あの日のことは、梨々香から上司と夜ご飯を食べに行くってメッセージが来ていたのは確認していたし、俺自身何度も考えているように、梨々香はそういうことするような子じゃない。

「…でも…」

「…俺のことより…自分自身を大切にして」

おそらく…今日出社して、いろいろな視線が集まるだろう。

きっと、そのことは梨々香自身も覚悟はしていると思う。だけど、実際その場でしか分からない苦痛もあるだろうから…俺なんかのことより、自分のことを優先してほしいと思った。

「…うん。ありがとう」

俺の気持ちが少しは伝わったのだろうか。そう言って、梨々香は立ち上がってお皿をシンクへと運ぶ。

「…今日から泊まり込みのだけど…なるべくスマホ見るようにするから…何かあったら連絡して…」

「…うん。でも、大丈夫」

無理して笑う梨々香に、胸がギュッと苦しくなる。俺に負担をかけたくないと思ってることが、痛いくらい伝わってきた。


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