私のお願い、届いてますか？
先輩の言葉に、小さく頷いて会社の入り口の前で立ち止まる。

軽く両頬を叩いて気合いを入れ直して、気持ちを切り替えた。

そんな私をみて、先輩はちょっと苦笑い。だけど、こうでもしないと、仕事でミスをしてしまいそうな気がした。

ロビーでいくつかの視線を感じながらも、おどおどした姿はなるべく見せないように、顔を上げてエレベーターに向かう。

「…河田さん、すごい」

2人きりのエレベーター内で、玲子先輩が感心した様子で言った。

「…これ以上会社に迷惑かけれないので…」

「そう…。無理しすぎないことよ？」

「はい」

部署のある階に到着して、エレベーターの扉が開く。

先輩の後に続いて下りて、自分の席について、小さく息を吐いた。

微妙な視線が突き刺さるのは感じているけれど、あえてもう顔はパソコンにだけむける。

カチャカチャっと、キーボードを叩く音が自分のデスクスペースに響いて、少しずつ仕事モードに切り替わっていく。

デスクに置いてあった、資料の修正箇所に目を通しながら、データを変えていくと、パソコンに1通のメールが届いた。

えっ…

なにこれ…。

メールの内容に全身の血の気が引いていく。


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