私のお願い、届いてますか?
「主人の仕事の転勤でこっちに来てから、家を建てて、こっちに住むようになったの」

そうだったんだ。こんな形で、先生にまた会えるなんて思っても見なかった。

「…梨々香、稲山先生の教え子だったの?」

冷たいコーヒーの入った紙コップを私に手渡たすと、秀人はちょっと驚いた様子で尋ねた。

「うん。びっくりしちゃった」

「ふふっ。名字も変わっちゃってるからね。本当は、専業主婦しばらくしてたのよ。でもね、縁あって、今はここで働いてるの」

先生授業は、確かに他の先生とは好きし変わっていて、専門的なことも取り入れてくれていた。

そのことを肌で感じていたから、この職種についてることに、納得。

「それにしても…あの相村くんが血相変えて迎えに行った彼女が河田さんとはねー…」

嬉しそうに笑ったみなみ先生は、秀人を見る。すると、秀人はぷいっと向きを変えて、

「…あっちで続きやってます」

と、ボソッとつぶやいて、隣接している部屋の中へと入っていった。

「ふふっ。新鮮ね」

今度は私の方を見て、優しい眼差しを向ける先生。

「河田さん、相村くん優しくしてくれてる?」

「はい」

前だったら、返事に躊躇する質問だったと思う。だけど…今だったら返事に迷うことはない。



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