麗しの薔薇
笑い続けている瞬さんを横目に、依頼人の方を向き直す。
「あなたも…えぇと、織宮さんもあれはただの噂。もう遅いけれど、普通に依頼して貰って大丈夫よ。」
噂─というのは、さっき織宮さんが口にした言葉
『私の宝石になって』
というもの。
事の発端は確かに自分。
ここのバーでは"レッド"と呼ばれているけれど、仕事をする時は"ルビー"と名乗っている。
でも、仕事上あまり身バレしたくなくて、もしも外で私に仕事を依頼するなら、その時は"宝石"という単語を入れて欲しいとお願いしていたら…
いつしか『私の宝石になって』がセットで必須だと噂され始めてしまった。
確かに瞬さんの言う通り、こんな台詞を掛けられるなんて、傍から見たら口説かれているように見える。
まぁ、それはそれでバレにくいから便利だと思うところはあるんだけど。