君が月に帰るまで
「ね、はじめ。悪い話じゃないでしょ? 地球見物にきただけだから。2週間いたらすぐ帰るし。月の出てない間はウサギになって静かにしてるから」

あれ、自分の名前言ったんだっけ? ちょっと引っかかるが話にとりあえずついていく。
はじめは朔の方を見て口を開いた。

「2週間?」
「2週間です」
「ほんとに叶えてくれるの?」
「二言はございません。ですが、条件がいくつかございます」

朔はいつの間にかひざまづいている。
「えっ、条件あるの?」

はじめが驚いていると、朔は書面をスーツの内ポケットから取り出した。それにはこう書いてあった。

1.姫が月からきたことを知られないようにすること
2.ウサギから人間になる姿、またその逆を他人に見られないようにすること
3.性的行為をしないこと
※8月14日、月の入りとともに帰還します。「もっ……もしこの条件を破って、他の人にバレてしまったら?」

朔は顔を上げ、こちらをジロリと見た。冷たい視線に、体が凍りつく。

「地球見学は即終了となり、あなたさまの願いを叶えることは致しません」
「なるほど……。えっ、これってどこかで監視されてますか?」
「はい。月の宮殿で監視しています」

壮大なSFか。はじめはしばらく考えこんでいたが、「わかった」というと小さく息をついた。

「向田には、遠い親戚ということにしておきます。両親も兄もその間は帰ってきませんので、問題ないと思います」

「ありがとうございます」
「やったー!!」

朔は深く頭を下げ、月夜は両手を突き上げた。

「ねぇ、このカッコじゃ寒いから、服貸して?」

なんだがずいぶん図々しい姫だな。はじめは先が思いやられるなと思いつつも、渋々立ち上がる。

「服って、母のでいいですか?」
「いいよ。いまから舞をやるから、着物貸して」
「舞? 着物?」
「そうよ、置いていただくのだからこの家にもはじめにも、ご挨拶しなくちゃ。感謝の舞は得意だから」
「わかった。母さんの着物とってくる」

はじめは着崩れた着流しを直しながら、母の着物を取りに行った。









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