君が月に帰るまで
9.長縄跳び大会
時刻は16:15。まだ人は少ないが確実に集まりつつある。会場の広場に、はじめ、ゆめ、かえで、詩織の4人が到着し、本部のセッティングをしているところへ夏樹たちが大量のお菓子を持ってやってきた。

「おつかれさま、ありがとう!」

はじめがにこやかに迎える。

「お前、ほんと人使いあらいよな」
夏樹が呆れたようにお菓子を置きながら言い放つ。

「ごめんね、それより問屋さんの動画みたよ! いい宣伝になった」

「SNSの方はどうなってんだよ」

長縄大会の宣伝と、消失加工した動画がSNSで広まると、西野弥生は焦ったのか、案の定ゆめがウサギに化けることを暴露した。

はじめの思惑通りに進む。さあ、あとは長縄跳び大会を楽しむだけだ。

わらわらと集まってきた人たちを、グループごとに分けていく。約10人のグループにかえでが手際よく分けて行き、27チームできた。

いっぺんにやるのは難しいので9チームごと、3回に分けて行う。

16:53。さぁ、そろそろ西野弥生が姿を見せる頃。そう思っていると、見張りの零から連絡がくる。風貌はゆめから細かい情報を入手していた。

『西野弥生登場。もうカメラ回してるっぽい。よろしくな』「詩穂さん、お願いします!!」

詩穂が力強くうなづくと、西野弥生のところまで駆けていった。向こうは二人。西野とカメラマンの男。

生配信動画を、はじめはスマホで同時にチェックする。

「話題の少女は加工動画をアップしてきていますが、対決を長縄でしようと言うのでしょうか」

なんか素人ダダ漏れの実況。でもこれが西野さんの初動画になるわけだし、(はなむけ)になってくれることを願って。

「こんにちはー!! お騒がせしてすみません!! 全ては私の動画加工のせいなんですー!!」

いきなり詩穂がカメラの前に立ちはだかる。
< 123 / 138 >

この作品をシェア

pagetop