君が月に帰るまで
「お腹すいた? 晩ご飯食べようか」

ゆめは嬉しいのか、ピョンピョン部屋の中を駆け回った。水を皿に出すと、勢いよくペロペロ飲む。ずっと外にいたのならさぞ喉が渇いただろう。

冷蔵庫を開けると、今朝コンビニで買ったハンバーグ弁当がそのままになっているので、昼も抜いたのだとわかる。

多めにエサを盛り付けて、ゆめの前に置くと、ガツガツと音を立てて食べ始めた。ウサギになってる時の気分ってどんな感じかな。考えれば考えるほど不思議。

はじめは自分も夕食をとると、庭の隅にある倉庫へいって、祖父の趣味だったDIY用具の中から、適当な幅の木の板を持ってきた。

後ろからゆめもちょこちょこついてきて不思議そうに見つめている。器用にスロープを作ると、それを祖父の部屋の縁側にかけて、部屋と庭の行き来ができるようにした。

「ゆめ、ちょっと上ってみてよ。これなら行き来できるでしょ?」

ゆめはそろそろと、スロープを上ったり下りたりする。問題はなさそうだ。「さっきも、ウサギのままじゃ縁側に上がれなくて困ってたんだよね? 行き来これで自由にできると思う。
そのかわり、雑巾絞って縁側に置いとくから、ちゃんと足を拭いてから入ってきてよね」

こくこくと、かわいらしくうなづく。
まったく、心配ばっかりかけて。はじめはしゃがみこんで、ゆめの背中をそっと撫でる。
ゆめも気持ちいいのか、するすると僕に擦り寄ってきた。なんか癒されるな。

縁側にから中に入って戸締りをする。

< 54 / 138 >

この作品をシェア

pagetop