クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
物語は佳境を迎える。
佐紺先輩演じる姫の兄が2人の前に立ちはだかる。
騎士は姫を逃し、兄と剣を交わす。
シーンと静まり返った会場に剣がぶつかる音が響きわたる。
一度はけたわたしは、舞台袖から2人の殺陣を見守る。
すごい……。
集中力がこっちまで伝わってくる。
練習以上の気迫だ。
一糸乱れぬ動き。お互いの間を完全に把握し、理解して頭で考えるよりも早く動いていないとできない動きだ。
ほんとにすごい。
何度も稽古で見たはずなのに、本番の舞台上で繰り広げられるそれは、命を握られた本物の戦いみたい。
鬼気迫る2人の殺陣に、わたしは思わず息を呑んだ。