クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
上がった先では、厚そうな扉が来るものを待ち構えていた。
扉にはスマイリーのラクガキがでかでかと描かれていて、舌を出しふざけた顔をする様子から、まるで来訪者を煽っているよう。
ここまで来ると、予感はもうほとんど確信に変わっていた。
うわぁ……絶対そうじゃん。
ここって……。
「苫っ!」
わたしを呼ぶ声がしたのは、男が扉を開けようとした、まさにそのときだった。
ふり返ると、階段の下──踊り場に。
「斑……っ」
あぁよかった。間に合った。
ハルル、ちゃんと伝えてくれたんだ。
息を切らす斑の姿を確認して、今度こそ安堵の息をつける。ほんとによかった……。
一方で、わたしの周りにいる男たちはぴりりと緊張を走らせた。
『学園最強がそこにいる』って全身で叫んでるみたい。
斑が息を整えるように1歩ずつ階段をのぼって近づいてくる。そのたびに男たちの緊張が増していく。
そして、斑が最後の段を踏みこんだとき。男の1人がわたしの前に立ちはだかった。