クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
近くでぶつかる視線。斑の瞳が驚きでわずかに揺れたのがわかるほどの近さ。
でも、今のわたしにはそれが気にならない。
気になるのは斑の言葉。
気になる。どういう意味だろう?
「……なんでもない」
先に視線を外したのは斑のほうだった。
目をそらして手を離し、なにごともなかったかのような横顔を見せる。
斑が考えてることはわからない。
表情からじゃ読みとれない。
だからって、言葉にされたから読みとれるってわけでもない。
むしろ余計わからなくなったんですけど。
マイペースな自由人。予測不能の言動は今に始まったことじゃない。
うん気にしない。言われた言葉は覚えておくけど、深くは考えない。
──と、自分の胸に思いこませても、無駄にドキドキさせられた鼓動はなかったことにはできなかった。