二度目の好きをもらえますか?
「………え?」

 無意識に笑みが固まった。

『彩月はもうバイクに乗せない。買ったヘルメットはちゃんと渡すから』

「………」

 足から力が抜けてベッドの上に再び座り込んだ。頭の中でぐるぐると同じ問いが回り、口からこぼれた。

「なんで?」

『………』

 もしかして。

 一番考えたくない、嫌な想像が過った。

「彼女の……特等席だから?」

 賢ちゃんはまた無言だった。

 聞いても答えをくれない彼に、私は本来の目的を吐露する。

「あの……カオリさんって子と、ヨリを戻したの?」

 ハァ、と心底面倒臭そうなため息が伝わった。

『とにかく、そういう事だから。じゃ』

 プツ、と回線が切られ三度の不通音を残して待ち受け画面に戻る。

 美味しそうなスイーツの画像が急に波打ち、歪んで見えた。水の中に沈んだスマホを手離し、私はその手で涙を拭った。

 ***
< 124 / 193 >

この作品をシェア

pagetop