二度目の好きをもらえますか?
 英語ノートの端っこに走り書きして伝えると、彼はハッとして教科書を開き、立ち上がった。辿々しい発音で英文を読む。

「……えっと」と言ったきり黙り込んだ彼に、時計の秒針と先生の睨みが追い討ちをかける。

 どうやら英訳の予習などやっていないようだ。

 無言の圧力に耐えきれなくなったのは私の方だ。

 ノートの端を破り英訳をササっと書いて隣りの机に素早く置いた。

 紙切れに気付いた大谷くんは、眉を潜め、またしても辿々しい日本語を発してから席についた。

「よし」と先生は頷き、黒板に英文と文法を板書しながら説明を始めた。

 ミヤちゃん先生からのお咎めを無事クリアした彼は、眠気まなこを擦りながらノートの隅に何かを書き、私に見えるよう右端に寄せた。

 “さんきゅ、助かった”

「……あ、うん」

 あれ、何だろう。これ……。

 胸のあたりからホワホワと笑いがこみ上げて来るような、ウキウキした感覚につい頬が緩んだ。

 単純に、嬉しいと感じていた。

 大谷くんはニヤニヤする私を見て、一瞬鼻で笑ったように見えたが、嫌味なそれではなかった。


 *

 翌日の午後八時過ぎもバイクの音を聞いた。週末は三日続けてだ。
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