二度目の好きをもらえますか?
 反射的に賢ちゃんの肩に手を掛けてしまい、カッと頬が熱くなった。

 何だこれ、近い……っ。

 反応に困って、慌てて上半身を仰け反らせると「おい、派手に動くな」と注意された。

 賢ちゃんの手に両手を交互に掴まれて、彼の腹部に回される。

 ……っへ!?

 単純に男子と密着しているのが恥ずかしくて、耳まで熱くなる。

「離れてると危ないから、ちゃんと俺に捕まってろ」

「う、うんっ」

 バイクで走るのは危険と隣り合わせだから。捕まっていないと危ないから。だから、決して他意はない。

 そう分かっているのに、一度意識した心臓はなかなかいう事を聞いてくれず、ドキンドキンと鼓動を早めている。

「わ、わかった」

 賢ちゃんは友達。

 そう何度も心に言い聞かせて、私は彼の背中に頭をくっ付けた。

 ほのかに柔軟剤のような良い香りが舞って鼻腔をくすぐった。

 腕を彼のお腹辺りに回し、左手で自分の右手首をギュッと握る。

「よし、出すぞ?」

「……うん」

 私の返事を合図に、バイクのエンジン音が鳴った。いつも二階の部屋で聞いていた音が、身近に鳴っている。

 賢ちゃんは友達だけど……。

 私とは違う男の子。

 異性への意識が何度も頭の中を駆け巡り、爽快な風を感じる余裕など微塵もなかった。

 ***
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