バチラスライン/SFショートショート選③

カウントダウン、始まる!

ジャスト1時間のカウントダウンは始まった‼

ホシオは定刻ちょうどに、あらかじめセット済の数万にも及ぶ発信パーツを自動ハッシャした。
しかるに、これとほぼ同規模のハッシャが、全世界の人々がほぼ同時に放たれたということになる。

”始まったのか…”

数十秒後、今度はホシオの元には膨大な受信パーツが到着。
だが…、ホシオにはこれらのほとんどにそれこそほとんど何の意味もなった。
メールやラインの”中身”はそれこそ数通目を通しただけで、後は自動返信に委ねたから。
要はキリがないんで…。
添付動画も99.9%は自動開封でやり過ごす。
そう言うことだった。

💀💀💀

なので、残りの0.1%の受信をホシオは直対応となる。
そして…、パソコンのメインディスプレイにはうら若いガイコク人のオンナが映し出されていた。

”ハロ~~💛、ホシ~オ❕愛してるわ~~☆彡(注⇒自動通訳隅済。以下同様)”

”おー、メリッサぁ~~❣オレもだ!!…これからのカウントダウンはキミと二人で過ごしてくれるんだね❓”

”モチよ!!ハッシャされたのよね、ついに…。ここからセカイにどんなステキな変化が起こるか…、アナタと一緒に見届けるわ~💖”

”おー、メリッサ!アイラブユー💖一緒にだ。オレたち二人はモクゲキシャになるんだ!!”

二人はオンライン越しで繋がりながら、ハッシャ祭りのもたらす”何か”を見届けるモクゲキシャとなる誓いを立てた。
こんな遠距離オンラインカップルが今夜、何億も存在した訳で…。

💀💀💀

そう…、ダイレクトに人と触れ合うだんだんが世界中の人々から奪われて、彼らはオンラインによってその穴埋めを求めた。
そうせざるを得なかった。

ホシオはオンラインのクラブハウスで彼女と国境を越えて知りあい、胸ときめくデートをオンラインで重ね、そして共に愛し合う気持ちを培った。
これもオンライン介して。

ただ、出会いから1年後、ありとあらゆる理由付け、そして完全感染予防策を講じ、二人は現時点で数か所しかないオアシスゾーンでナマのデートにこぎつけた。
無論、生身で触れ合ったカタチで愛し合ったのだ。

💀💀💀

その時の二人の気持ちは共に以下の通り、端的だった。

”どうか今夜で、この人とのベイビーが授かりますように~❣”
だが、二人の願いことは叶わず、次の再会を胸に熱く刻み、無事、新新型ゴロナウィルス感染セーフで帰国を果たす。
で、更なる愛をオンライン越しに育みあう…。

これこそ、世界中で生まれたカップルの定番コースであった。
そんなプロセスを踏んだ数億のカップルは、リアルタイムにハッシャ祭りを共に体験する…。
更にその意味するところこそ、そのつながりは世界中同時で共有することとなり、オンラインによって、彼ら彼女らは、親の世代が体験したニンゲンならだれでも欲する願望を叶えたのだ。

💀💀💀

これは、この時代における、極限レベルでのコミュニティー参加に相当するふれあいの到達点だったに違いない。
当然ながらオンラインをたよってにはなるが、人々が連帯し、何かを変えることのできる実証をこの目で皆が体感する…。

その変えた証はもうじき訪れる。
”さあ、何が起こるんだ!通信臨界を遂げたあと、世界…、いや、自分たちの生きているこの地球はどんな現象を導かれるのか…”

人々はカウントダウンの中に身を置き、愛する人とオンライン越しで欲し求めたドキドキ感、トキメキ感にどっぷりとつかって、半ばと陶酔状態で来るべき臨界点を待った。




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