さよなら、坂道、流れ星

第15話 ずっと

「“引っ越さない”は叶えられないけど、“ずっと一緒にいる”は、これから先の長い人生でって意味なら叶えられるよ。だからチズ、俺と結婚して。」
昴は平然とした様子で静かに続けた。
「へ?え!?」
当然、千珠琉の方は目の前の指輪と昴の突然の言葉に頭が追いつかない。心臓だけが、ことの展開スピードと同じくらいの早鐘を打っている。
「すば…何言って…それって…」
「うん、プロポーズしてる。チズに。」
“プロポーズ”という言葉すらも平然と言われてしまった。
「嫌?」
「嫌…とかじゃない…けど、突然すぎて…頭が追いつかないっていうか…え、冗談とかじゃなくて…?ていうか…まだ17歳だし…?」
“冗談”という言葉に昴は少しだけムッとした。
「冗談で指輪まで買わない。17歳(ジュウシチ)だから、もちろん今すぐに婚姻届出すわけじゃないし、一緒に暮らすわけでもない。婚約ってやつ。」
「こんやく…」
普通の高校生の千珠琉にとっては結婚よりも聞き慣れない言葉だ。
「千珠琉からしたら突然だろうけど、俺は中二の冬からずっと考えてた。いつか引っ越すって決まってたから、それまでに金貯めてプロポーズするって。ギリギリになっちゃったけど。」
(そんなに前から…)
そんなに前から昴がこんなことを考えていたなんて考えもしなかった。
「チズ、嫌?」
昴が千珠琉の顔を下から覗き込むようして聞いた。
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