さよなら、坂道、流れ星
こたえはとっくに決まっていた。
()なわけない。」
「チズ、顔真っ赤。かわいい。」
耳まで真っ赤になっていた千珠琉の顔が、昴の言葉でさらに赤くなった。

昴は自転車から降りて立ち上がると、千珠琉の手のひらの上から指輪の箱を取って指輪を取り出した。
「左手出して。」
昴に促されて千珠琉が小刻みに震える左手を差し出すと、昴は薬指に指輪をはめた。
「え、すごい、ぴったり。なんで私の指輪のサイズ知ってるの?」
「八重さんに聞いた。」
「え」
急に母の名前が出ることに戸惑ってしまう。
「…てことは…」
「うん、八重さんは知ってるよ。俺が千珠琉にプロポーズするって。」
そういえば、何ヶ月か前に指輪のサイズの話題になったことがあった、と千珠琉は思い当たった。たしかに八重子は妙にニヤニヤとして楽しそうだった気がする。
「八重さんなんか言ってた?」
「“昴くんなら安心だし、朱代さんと親戚になるのも楽しそうね〜”って。ノリノリで。」
「…言いそう…。」
恋愛事情を親に知られているというのはなかなか恥ずかしい。
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