さよなら、坂道、流れ星
「あー、悪い、なんか一瞬意識飛んだ。」
「え、あぁ…うん…。」
よくわからない切り返しをしてしまう。
「金貯めたいんだ。それだけ。」
何事もなかったかのように落ち着いた口調で返ってきたことが、ますます千珠琉の心臓にチク、とトゲを突き刺す。
「何か、欲しいものでも…」
と、千珠琉が言いかけたとき
「あ!流れた!」
「え!?」
「あーほらまた、チズの頭の方!」
「え」「え」「え、どこ、嘘」
千珠琉は慌ててキョロキョロと振り返って空を見上げた。
「チズ、慌てなくて大丈夫だよ。これからピークって書いてあったから、まだまだ流れるよ。」
今度は後ろから頭をまたポンと叩かれた。
昴から見えない千珠琉の顔は赤くなっているし、口元が少しだけ緩むのを必死に堪えたようなおかしな顔になっている。

(昴…)

千珠琉が流れ星に、初詣に、七夕に、誕生日ケーキのキャンドルに願う事はもう何年も一つに決まっている。

(昴とずっと仲良く一緒にいられますように。)

今日も千珠琉は声に出さずに願った。
声に出さない効果なのか、この願いは叶い続けている。

声に出さなくても昴は千珠琉が何を願っているかとっくに気づいている。そんな千珠琉が可愛く、昴にとってももちろん嬉しいが必死に願う千珠琉を見るその表情はどこか曇っているようだった。
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