ひとりぼっちのさくらんぼ
お店には駅から十分も歩かない内に着いた。
『洋食店 Omikuji』という看板が出ている。
「変わった店名でしょ?」
市原さんがお店のドアを開けた。
ドアに付いているベルが、高い音でリンリン鳴っている。
「いらっしゃ……、あ、朝日じゃん」
と、店内カウンターから声をかけてきたのは。
見た感じ五十歳くらいの、帽子をかぶった男性。
「こんにちは。二人なんですけど、空いてますか?」
「空いてるよ!好きな所に座りな!」
窓際のテーブル席に座るあたし達。
市原さんと向かい合わせに座ったお姉さんの隣に、あたしもちゃっかり座る。
椅子がフカフカで、ちゃんと実体がある状態で座ったなら、もっと気持ち良かったんだろうなと思う。
テーブルについて程なく、女性店員がお水を持ってきてくれた。
「いらっしゃいませ。こんにちは、朝日」
女性店員は四十代半ばって感じの、キレイな人だった。
薄いメイクだけど清潔感があって、ショートヘアがとても似合っている。