ひとりぼっちのさくらんぼ

「うん。家と会社の、ちょうど中間地点だからかな?寄り道で来るよ」

「じゃあ、あの日まで全然会わなかったことが不思議なくらいだね」



お姉さんと市原さんはソファー席に向かい合わせに座って、朝ごはんメニューを見ている。

あたしはお姉さんの隣に座って、ふたりを見守っていた。



「あ、おはようございます」



女性店員がテーブルに寄って来た。

二十代くらいの、若い人。

長いストレートヘアを、後ろでひとつに束ねている。

細くて、スラッとした背の高い女性。

美人とは思わないけれど、愛嬌のある人だと思った。



「おはようございます」
と、市原さん。



「知り合い?」
と、お姉さんが小声で尋ねる。



「うん。ここのカフェ、常連だから。いつの間にか話すようになってて」



そう答えている市原さんに女性店員は、
「今日はおひとりじゃないんですね」
と、少し高くてキレイな声で言って、ニコニコした。



市原さんは嬉しそうに、
「はい」
と、返事をする。

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