ひとりぼっちのさくらんぼ

「ねぇ、あなたさ、どこかであたしと会ってない?」



そう言ってから、
「あ、ごめん。軽いナンパみたいなことを言っちゃった」
と、恥ずかしくてあたしはうつむく。



(でも、でも……!なんか知っている気がするんだよなぁ?)



男子は、
「あ、あの、オレは……、きみが事故に遭った時に、現場に居たんだ」
と、言った。



「ごめんね。飛び出したきみに『危ないっ!』って声をかけたけれど、結局止められなくて……」



男子も申し訳なさそうにうつむいた。



あたしは記憶を辿って。

確かに声をかけてくれた男子がいたことを思い出した。



「じゃあ、あなたがあの時、救急車を呼んでくれた人だ!」



そう言うと、男子は静かにうなずく。



「ありがとう。あたし、あなたのおかげで生きているよ!」

「え、ううん、オレは何も……」



男子はそう言ってから、
「助かって良かったね」
と、笑ってくれた。




「あたし、上条 絵玲奈。本当にありがとう。あなたはあたしのヒーローだよ」

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