ひとりぼっちのさくらんぼ

名乗って、頭を下げると。



男子も、
「あ、オレの名前は……」
と、名乗ろうとしてくれた。



でも。

その時。

あたしの頭の中で。

何か、恐ろしい音が鳴り響いた。



警笛みたいな。

怖い音。




思わず、
「待って!」
と、遮ってしまった。



「え?」



男子はきょとんとしている。




「あなたと知り合うの、なんだか怖い。悪いことが起こりそうで」



あたしはそう言って、ハッと我に返った。



「あ、ごめんね!!ヒーローに何を言ってるんだろう?」



笑ってごまかす。



そんなあたしに男子は、
「いいよ、大丈夫」
と、優しく言ってくれる。



そんな男子に。

あたしはときめいた。



あたし、この人のこと。

もっと知りたい。

もっと、関わりたい。




「……ただの胸騒ぎってやつかな?」
と、あたしは頭を小さく掻く。



それから、あたしは男子に向かってこう言った。

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