ひとりぼっちのさくらんぼ

そういうことじゃないんだけど。



「タイムスリップの前に何かあったの?高田くんと」

「え?何かあったっけ?……なんか、でも高田くんの名前を聞くとさー、あたし自身がすっごく恥ずかしく思っちゃうんだよね」



あたしは両手で顔を隠す。



「なんで?本人に読まれたら困る小説を書いていたから?妄想をノートに垂れ流して……」

「うぅ〜、言い方、なんか意地悪じゃない!?」



うずくまるあたしに、お姉さんは声をあげて笑う。



「あはっ、あはははっ!ごめん、ごめん。あなた、ちょっと可愛かったから」

「ひどい……、悪い大人だ!」



お姉さんはあたしの隣に座って。

あたしの頭をポンポンと撫でた。



「J Kちゃん、あなたは大丈夫だよ」

「何が大丈夫なのぉっ」

「高田くんのこと、そんなに思い出さなくなるよ」



「えっ」



お姉さんは平然と言う。



「思い出しても、あなた、何とも思わなくなるよ。今は何かのきっかけで、思い出したら恥ずかしく思っちゃうみたいだけどさ」

「何とも思わない?」


< 94 / 224 >

この作品をシェア

pagetop