ひとりぼっちのさくらんぼ

それはそれで、何か……、複雑だけど。



「何だっけ、あの子。あなたさ、クラスメートに苦手な子いなかった?私は、名前すら忘れてるけど」

「え?学級委員の、坂崎さん?」



お姉さんは「あぁ、そんな名前だったわ」と言ったけれど、さほど興味も無ければ、動揺もしていない様子だった。



「確かさ、あの子達って付き合ってなかった?」

「え……」



……そういえば。



「そうだ、そうだった!」



あたしは人差し指でお姉さんを何度も指差す。



「あたし、ふたりが一緒にいる所を見て……、そう、ショックを受けて!なんか、その場から走り去ったんだよね!?」

「いや、私に聞かれても、もう忘れてるから」
と、お姉さんは首を振る。



「それから……」

「うん」



あたしは頭の中で過去の記憶を辿る。



(すっごく走ったんだよ。見たものを忘れたくて……)



「公園だった……、で、あたしは公園を出て……」

「うん」

「駅前の、交差点で……」

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