深紅の復讐~イジメの悪夢~
「もしもさ、もしもだよ。あたしが、いじめられているって言ったら、どうする?」
ちょっとした、いや、でもあたしにとっては重大な賭けだった。
お母さんの箸が止まった。
お母さんがあたしの顔を覗き込む。
あたしは、心臓の音が聞こえるんじゃないかと心配になった。
お母さんが真顔になったのは一瞬で、すぐに、元のにこにこしたお母さんに戻った。
「あはは、え?愛香、変なの。愛香がいじめられるわけないじゃない!だって、お母さんとお父さんの自慢の娘でしょ?」
………覚悟はしていた。
お母さんが、味方になってくれるなんて、甘い。
そんなこと、分かりきっていた。
でも、いざ言われると…
悲しい。
『お母さんは味方だよ』
ただ、その言葉が欲しかっただけ。
でも、現実は厳しい。
そんな、どこかの小説みたいな優しい親なんて、そんなの、普通いない。
「う…うん。あはは、そうだよね。なんでもないよ。」
あたしは、無理に笑って、ステーキを口に押し込む。
『何かあったら言ってね。』
ただ一言、そういうふうに言って欲しかった。
百合香に、裏切られて、お母さんに、裏切られて。
憧れていた麗華やその周りの人々も、理想とは全然違う、いじめっ子で。
奈々美も、いじめっ子になり下がって。