身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「ごめんなさい、あまり記憶力がよくないもので……でも今日のことは忘れませんわ」
「今日で終わらせるつもりはない。俺と結婚してほしい」
先ほどから彼は直球で来る。あまりにまっすぐで言葉に詰まった。
返事はイエスだと決まっている。そのつもりでここへ来て、なんとか結婚にこぎ着けてしまおうと謀ったのは私の方なのだ。
今さらなにを悩んでいるかと思うが、本当は可愛くも素直でもない男勝りなこんな私を、彼を騙して貰わせるのは心が痛くなってきた。
彼はしとやかで可憐な花純が好みなのに、こんな真逆な私なんて。
貴仁さんは黙り込んだ私をじっと見つめ、テーブルの上で手を伸ばしてきた。大きくて男らしい手のひらを差し出され、私は促されるまま、膝に置いていた自分の手をそこに乗せる。ぐっと握られると、彼の熱さが伝わってゾクゾクとした。
「今からきみを……部屋に連れて帰りたい」
不意打ちの誘いに心臓が音を立てる。驚いて繋がった手を離そうとしたが、彼は握ったまま逃がしてくれない。
お見合いの後に部屋へ連れ込むなんて。彼はなんて躊躇のない、強引な人なんだろう。