身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「私、実は……経験がない、です」

恥ずかしく、顔に火が着くほど熱くなっている。こんなことを誰かに白状しなければならないなんて。
それに花純本人は、三橋さんとすでにそういう関係なのだ。花純のふりをしているはずなのに、経験がないのは私自身のことである。花純のベールを被ることで自分を隠していられたのに、これから暴かれるのは私の本当の姿に違いない。

「……問題ない」

そう答えた貴仁さんはどこか高揚している様子に見えた。指の裏で私の頬を撫で、前髪をさらりと鋤いてくれる。

「このまま、俺に委ねていればいい」

ああ……優しい言葉が胸が響く。まだ数時間しか一緒にいないが、彼は嘘をついたり、偽りの優しさを見せて取り入るようなタイプではないと感じている。興味のない人は視界にも入れないが、好きな人には直球で、情熱的に愛するタイプ。それは一途とも言え、もしかしたら、三橋さんに出会う前の花純にアタックしていたら私は彼の邪魔はしなかったかもしれない。
でも、残念ながら花純はもう貴仁さんのものにはならないのだ。

「貴仁さん……私では物足りないかもしれませんが、満足していただけるようにがんばります。貴仁さんのしたいように、私を抱いてください」

私の心からの言葉が出ていた。私では花純の代わりになどならないけど、それなら精いっぱい、彼のためにがんばりたい。

< 38 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop