身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「……やはり、柊専務は花純に気があったようなんだ」

「ええ?」

花純の驚きの声より先に、私は心の中で黒い感情が渦巻く。そして写真の柊貴仁を睨みつけた。
気があるって……花純とは社交の場で挨拶を交わすくらいで、面識はないはずだ。彼ほどの人は女性には困らないだろうから、花純と言えど女性に執着することはないと思っていたのに。それが、どうして見合い写真を見せられているんだろう。

「申し訳ない。私が直接呼ばれ、花純との婚約を申し込まれてしまった。それも、シーナ製紙の存続を条件に」

「シーナ製紙の存続?」

私が聞き捨てならないキーワードを聞き返すと、父と母の表情は曇る。それを見て花純と私も顔を見合わせて首を振り、お互いになにも知らないことを確認した。父はさらに重い口を開く。
< 6 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop