身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「実は、シーナ製紙に吸収合併の話が持ち上がっているんだ」
「吸収合併!?」
「柊和コーポレーションの一部となることで資金不足を解消し開発を続けられる、うちにとっても悪い話じゃないが、開業から受け継いできたシーナ製紙の看板を私の代で失うことは、創業者たちに申し訳が立たず……。それがネックだと見抜いている柊専務は、合併を取り止め、資金提供の形に切り替えることでシーナ製紙の存続を提案している」
「そんな大事なこと……」
花純は唇に手をあて、ショックの表情を隠さない。私はともかく、花純はシーナ製紙の長女として会社の未来を背負っているのだ。花純にはきちんと話してほしかった。でも、私が一番気になっているのはそこではない。相手は花純を人質だとでも思っているのか。そんな形で手に入れようなんてひどい話だ。