身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
これまでより距離が近すぎる気がして離れた方がいいかと思ったが、貴仁さんから離れる様子はない。このままを保ちながら、彼がいる左側だけがじりじりと熱くなる。
「……なにかあったのか?」
彼は横目で私を見ながらそう尋ねた。
「え? なんのことですか?」
いったいどれのことかわからないほど昨日から激動の日々なのだが。すると貴仁さんは視線を私の膝あたりから胸、髪へと泳がせながら動かし、最後には目を逸らす。
「その……雰囲気が、違う」
指摘され、〝しまった〟と思いスカートや髪を押さえた。私の普段の姿を見せたのは初めてだった。これまで見た目を花純に寄せていたのに、いきなりイメージが変わり気を悪くしただろうか。
「すみません……実はこっちが普段の私なんです。貴仁さんはこういう服装はお好きではないと思いますが、会社ではいつも通りじゃないと花純と見分けがつかなくなってしまうので。もし見苦しいようでしたら、これからは会社で着替えてから帰りますが」
「いや、この方がいい。似合っている」
「……え」
「俺はどちらかと言えば、今の方が好みだが」
彼のまさかの評価に、猛烈に体が熱くなる。