身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

「あ……え……ありがとうございます」

初めて褒められた気がして胸がいっぱいになった。急にどうしたんだろう。花純のような外見が好みなんじゃなかったのだろうか。それとも私が着るならこっちの方が好きだという意味? 着こなせていないから普段の服でいい、と暗に言われているのかもしれない。

なんとなく妙な雰囲気のまま、シャワーを済ませた。
先ほど普段着の方が似合っていると言われた手前ネグリジェにはなれず、念のため持ってきていた予備のパジャマに着替える。グレーのセットアップで、少し高級なシルクの専門店で買ったものだ。形はボタンで留めるタイプのごく普通のパジャマ。体にツルンと流れるような着心地で、やっといつものようにリラックスできた。

私の後には貴仁さんがシャワーを浴びており、寝室にもかすかに水音が聞こえてくる。なんだか変に意識してしまう。花純の格好をするのもそわそわするが、自分の格好をするのは己を晒しているようでさらに恥ずかしい。

気にしてはダメだと思い、彼が戻ってきたときに気まずくならないよう先にベッドの中に潜り、外側を向いて目を閉じてみた。
しばらくして、貴仁さんが戻ってきた音がする。

「香波」

あ……どうしよう。返事をしたいのに、寝たフリをしているせいでし損ねてしまった。

「俺と寝る体力は残ってるか?」

「寝っ!?」

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