身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

俺に関して、欲しいものはどんな手を使っても手に入れるという巷の評価があったが、徐々にそれを自覚することとなる。

シーナ製紙の買収を資金提供に切り替えれば、椎名花純は俺に恩を感じるのではないかと考えた。技術に誇りを持った職人気質な社員も多いシーナ製紙は、社名を奪えば大量退職の危険もあり、俺はもともと買収という形に危機感を持っていた。父が主導している買収だが、俺の一声で取り止めることができる。そうすれば、彼女も喜ぶのではないだろうか。

『椎名花純との結婚を条件に、シーナ製紙を存続させる』

俺の出した条件は字面にすると強引なものだったかもしれないが、残された可能性にすがりつき、ただ祈るように返事を待っていた。

一度会ってから決めるという返事があり、首の皮が一枚繋がった。うまくいけば彼女を俺のものにできる。ビジネスでは、相手に納得できる仮説と得られるメリットを明示できればどんな要望でも叶った。椎名花純にはそうはいかないだろう。彼女を求める気持ちは理屈ではなく、ただもう一度会って、触れて、抱きしめてみたかった。
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