身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
当日、やはり彼女は美しく、俺は柄にもなく緊張した。女性を前にし、胸がいっぱいで顔が熱くなるなど初めてだった。
『こうして見つめ合っていると、なんだか緊張しますわね』
しかし、あの日の彼女とは少し違う気がした。記憶に残っているあの笑顔ではなく、不自然で嘘くさく、作り物のようだった。強引な俺を警戒しているのかもしれない。またあの笑顔が見たくて必死になるが、手応えがなく焦っていく。
『失礼なのですが、私には心当たりがありません』
『ごめんなさい、あまり記憶力がよくないもので……』
『人の上に立つお方ですから、高いところにお住まいかと思いましたわ』
会話にも人柄にも違和感を感じる。こんな女性だっただろうか。もっと自然で、堂々としたイメージだった。俺を案じたあの輝くような笑顔とはまったく違い、まるで媚びるような顔をする。エレベーターの件も、俺のことも覚えておらず、まるで別人だった。